携帯電話のメールではみなさんご存知のように保存できるメールの数が決まっています。大事なメールについてはロックしてあるのでたいした問題じゃないんですが、ひとつだけ、ロックもせず、しかし消せないメールがあります。
それは去年のいまごろ、ちょうどWaoがFFXIをやっていなかったときのことです。わが分身、Warnくんは半年くらい休業していました。
これについてはLSメンバーの方々に多大なご心配をおかけしましたが、復帰したときのみんなの温かい反応で、Warnは無事に、今もヴァナを走り回っております。
このころWaoにはいろいろなことがありました。そのひとつが今回エントリーしていることです。
Waoは大学時代、テニスサークルに所属していました。いまでも後輩から連絡がきて、ちょくちょく顔をだしたりしています。
OBであるWaoはサークルの名簿に名前は載っていません。だから後輩たちがWaoの連絡先を知るときには直接きいてきます。Waoもきかれてイヤな気はしないので教えてしまいます。(ダカラ今デモ呼バレル)
ある日、Waoの携帯にメールが届きます。それは、ちょっと前に携帯番号とメールアドレスを教えた後輩の女の子からでした。
内容は別にふつうです。「きてもらってうれしかったです!また遊びにきてくださいねヽ(*⌒∇⌒*)ノ」なんて、普通の、いまどきの女の子のメールです。
ただ、この子の場合はWaoが顔をみせると必ず挨拶をしてきます。そういう後輩はもちろんいっぱいいるのですが、大概の子はそのあと
「Waoさん、お仕事忙しいですか?」
なんて、ヘンに気をつかったことをいってきてしまいます。正直、忙しかったらきてないですよ。ありがたいんですけどね。
でも、その子はそんなことは一言もいわず「〜という子がテニス強くて…」「こないだサークルでこんなことがあって…」なんて楽しそうに語ってくれます。
ホントをいえば、OBであるWaoはこういう風に今の後輩たちがWaoが現役だったころと変わらず楽しんでいてくれている話がききたかったんです。
そんなことを話す彼女は、きっと心の底から自分のいるサークルを楽しんでいたのでしょう。役員もやっていたので、いろいろな苦労があったと思いますが彼女はそんな苦労を微塵もみせない笑顔でWaoに話します。
Waoは後輩たちともよく飲みます。ただ、やはり連絡先を知ってる後輩に限られちゃうんですね。その子はサークルが大好きだったので、いつまでたってものたくってるWaoという先輩とも飲んだり遊んだりしたかったのでしょう。
「こんど飲むときは連絡するねぃ」
なんてメールを返信したのを覚えています。
でも、その子とそれから飲むことはありませんでした。
そのメールが送られてきて一月半がたったときです。そのときもコンパがある、ということでその女の子の同期の会長から連絡をもらっていました。
しかし二日前、その会長からWaoに電話がありました。水曜日の午前中、しかも勤務時間中です。しかもメールではなく電話。
会長をやるくらいの後輩ですから礼儀はしっかりしています。よほどの用がないかぎり勤務時間中に電話などしてきません。
気になって、ちょっと席を外し電話にでます。
「Waoさんお仕事中すいません。あさってのコンパ中止になりました」
「どうした?なんかあったのか?」
「実はサークル内で事故があって…」
後輩がトラックに引かれたということです。引かれたのはメールをくれた、あの子でした。
「すいません。予定調整してもらってたのに」
「そんなのあやまるところじゃねぇだろっ!それより事故の程度は?」
「…生きるか死ぬかのところです。医者は回復は奇跡に近いと…」
そのあとのことは、もうあまり覚えていません。仕事もあまり手がつかず、定時すぎに会社をでて会長の後輩と落ち合い、お見舞いにいきました。
そこにはいつもの笑顔を見せることはない後輩がベッドに寝ていました。周りには他の後輩たちがもってきたのであろう数々の写真やサークルに関連あるものとともに…
Waoには不思議なカンというか変な運があります。観た瞬間の印象だったのですが「ああ、空っぽだ…」
理由はわかりません。とにかくその子はそこにいるのですが、もういないのがなんとなく、観えてしまいました。
こういったもののせいなのでしょうか。お見舞いにいった中で涙一つながさず病室をでてきたのはWaoだけだったそうです。
その後はOB・OGからくる会長への電話を目の当たりにして、その都度、同期の不幸を語らせられる会長が可哀想になりOB・OGへの連絡、葬儀の段取りはWaoが仕切ることにしました。その数200名弱です。
とにかく疲れました。忙しい中で協力をしてくれるたくさんの後輩もいましたが、中にはなんだかんだと協力しない後輩たち。気持ちはわかるけれど、いいカッコをしたいとしか思えない発言・提案をする後輩、そして悲しみを発散しきれない後輩たちのお酒の相手…
涙を流すことのないWaoへの「Waoさん、冷たいな…」という陰口もあったそうです。こういう大人数を仕切るときに感情はいらない、と考えてるWaoにとってはあたりまえの反応ですが。
幸いだったのは愛知から会社を休んでまで協力してくれた後輩や、仕事の休憩時間をつかってまで細かい連絡をくれた後輩たちもいたことでした。
そして疲れたWaoが飲もうというと付き合ってグチをきいてくれた友人たち。そうBalkan、Bercut、Mushaです。
「ヴァナのことは気にすんな。お前がログインしてもふつうになるようフォローしておくよ」
ありがたかったです。
連絡があって二日後、彼女はこの世からいなくなりました。ご両親からは「みなさんとお会いして娘がすばらしい仲間をもっていたことがわかりました。そして楽しい思い出を持てた娘は幸せだったと思います。ありがとうございました」という手紙をいただきました。
本当はお礼をいうのはこちらです。Waoだけでなく、まわりのみんなが彼女にたくさんの楽しい思い出をもらったのですから…
そしてWaoの携帯に残ったなんでもないメール。それとめずらしく自分の携帯で撮った後輩たちとの写真。そこには彼女がたまたま写っていました。
変なこだわりかもしれませんが、これらにロックをかけるつもりはありません。
でも、消すこともできません。
そんな一年前のお話です。